未来を見据えた就活: 転職を前提にした学生のための企業選びの軸

“未来を見据えた就活: 転職を前提にした学生のための企業選びの軸”

ここ数年、転職を前提にした就活に取り組む人が増えているといわれます。ひと昔前までは「ひとつの会社に長く勤めることがよいこと」とされてきました。           それが変わってきたのはどういう理由があるのか、そしてこれからはどうなるのか、今何をすれば良いのか、不安になる人は多いでしょう。そんな就職先も決まらない、どんな仕事をしたいのかもわからない、という就活生のために、現状を分析しながら「やるべきこと」を解説していきます。

※この記事では下記の機関のデータを参考に記事を書きます。

転職者の実態

厚生労働省HP

第1-(2)-26図 転職者数の推移等
令和4年版 労働経済の分析 -労働者の主体的なキャリア形成への支援を通じた労働移動の促進に向けた課題-(本文)の第1-(2)-26図 転職者数の推移等を掲載しています。

総務省調査

https://www.stat.go.jp/info/kenkyu/roudou/r5/pdf/21siryou4.pdf

転職を前提にした就活・企業選びはやるべきか

【結論:やるべきである】

理由

・雇用環境の変化

・会社定年後のライフプラン設計

この2つの理由についてそれぞれ解説していきます。

雇用環境の変化 日本型雇用の限界

第二次世界大戦後の復興から高度成長時代に定着した日本型雇用が維持できなくなっている。しかし新たな仕組みも出来ていない。日本型雇用が完全になくなるのか、あるいは復活するのか、非常に不透明であるということ。

少子高齢社会の進行による労働人口の減少と定年年齢の引き上げや定年後の再雇用の義務化。市場規模の縮小、経済の停滞などによる経営環境の悪化。経済のグローバル化による競争の激化、働く側の意識に変化。ワークライフバランスの重視、残業や休日勤務の回避などの要因によりメンバーシップ型雇用が維持できなくなりつつあります。

日本型雇用(メンバーシップ型)の特徴

  • 年功序列
  • 終身雇用
  • 新卒一括採用
  • 職能資格給制度

もちろんこの日本型雇用を維持している企業もあります。その一方で欧米のスタンダードになっている「ジョブ型」の雇用形態への移行も進んできています。

欧米型雇用(ジョブ型)の特徴

  • 年齢や学歴ではなく、スキルを有しているかが重要
  • 業務に対して雇用するため、配置転換や転勤などを命じることが難しい
  • 給与は、業務内容と役割で決定される                   

「ジョブ型とは明確な職務記述書(ジョブディスクリプション、JD:job description)を作成してその内容に基づき雇用されるシステムです。業務内容、責任の範囲、必要な経験やスキルのほか勤務時間や勤務場所、報酬なども細かく記載されています。このJDをもとに雇用契約を結ぶ、というやり方です。」

日本国内でジョブ型雇用の推進を公表している主な会社

  • 日立製作所
  • KDDI
  • 富士通
  • 資生堂
  • 双日
  • 三菱ケミカル

等々、導入する企業は規模の大小に関わらず増えています。

いずれの会社も全社員が完全ジョブ型雇用になってはいません。メンバーシップ型と併用している状況です。

日本の企業がこのまま完全ジョブ型へ移行するのか、メンバーシップ型へ戻るのか、あるいは新たな制度を作るのか、現時点では判断できません。

いずれの状況になっても対応できる準備が必要です。

◆その準備が「転職」を前提にするということです。

定年後のライフプラン

〜人生100年時代をどう過ごしていくのか、社会保障と自助努力の関係。

自助努力の割合が高くなってくる。

2024年現在、企業定年は実質65歳ですが、今の就活生の方が定年を迎える頃には70歳になっているのではないでしょうか。

少なくとも年金支給は70歳からの支給開始で動いています。高年齢者雇用安定法改正(21年施行)で70歳までの就業確保を努力義務としていますが、いずれ義務化され、年金支給開始年齢も70歳になるでしょう。

では70歳で定年退職したあとの人生はどうなるでしょうか。

100歳まで生きたとして30年間の費用はどうやって賄いますか。

公的年金と企業年金、退職金が十分にある人ならば問題はないでしょう。

もし企業年金や退職金がない、あるいは少ないとなったら、足りない分は自分で貯蓄するか70歳以降も仕事をするしかありません。

なお、企業年金を設けている企業は全体の約51%、1,000以上の大企業で92%、一方100人未満の企業では約33%程度に留まっています。この実態を踏まえて企業選びをしていきます。

資料:人事院「平成28年 民間企業の勤務条件制度等調査(民間企業退職給付調査)」

転職の実態 転職者の割合

まずは現状の新卒者の転職状況について解説します。

大卒者の就職後3年以内離職率  ( )内は前年比増減

事業所規模離職率
5人未満54.1%(▲1.8P) 
5人~29人49.6%   (+0.8P)
30人~99人40.6%    (+1.2P)
100人~499人32.9%     (+1.1P)
500人~999人30.7%    (+1.1P)
1000人以上26.1%     (+0.8P)
※上記平均 32.3% (+0.8P)

(参考:厚生労働省HPよりhttps://www.mhlw.go.jp/index.html

およそ30%の人が3年以内に退職(転職)しているということです。

またすでに定年退職した人へのアンケート調査では51.4%の人が一度も転職していないと回答しています。(キャリアバイブル・新卒入社した会社に勤めた年数に関する調査)

つまり約半数の人は転職を経験しているということです。

こうした実態をみると「終身雇用」という制度があっても、実際に新卒入社後定年まで務めた人は半分しかいないということです。調査対象者はすでに定年退職している人ですから、「定年まで勤めることが当たり前」といわれた時代に現役を過ごした人たちです。にもかかわらず約半数が転職しているということは「終身雇用」は絶対ではなかったといえます。

定年まで勤めるのが普通というのはイメージ先行と言えるでしょう。

転職によるメリット・デメリット

転職をすることでのメリット、デメリットも理解しておく必要があります。

主なメリット、デメリットは以下の通りです。

メリット

・年収アップにつながる

・キャリアアップにつながる

・人間関係をリセットできる

・やりがいを見つけられる

・人脈が広がる

積極的な転職の場合はこうしたメリットがあります。

毎日の仕事の中で転職を意識して、自分のスキルアップを続けていればメリットを享受することは可能です。

反対にネガティブな転職を行うと次のようなデメリットが生じます。

デメリット

・収入が減少する

・新しい人間関係を作らなければならない

・退職金や企業年金が少なくなる

・ローンの返済や借り入れが難しくなることがある

・転職を繰り返しすぎると採用されにくくなる

その時の感情で無計画な転職を行うとデメリットばかりになります。

転職を前提とした企業選びの軸 3点

転職の実態を理解したうえで、転職活動の軸を考えます。

転職活動の軸となる、企業選びの要素を説明します。

どんなスキルを身に付けたいのかを明確にする

まずは自分自身がどうなりたいかを明確にしましょう。

身につけるスキル、資格、実績は何をどうしたいのかを決めます。

まだ仕事もしていないし、やりたい仕事も見つからない、自分に何ができるのかもわからない、という方もいるでしょう。

そんな方のために、考え方の基準を説明します。

独立可能なスキル

今の時代、あらゆることがビジネスにつながります。

趣味や遊びでも突き詰めればビジネスにつながります。

ともかく、やりつづけるということが重要です。

会社といった組織を離れて、ひとりでもできるようになることを認識してください。

資格を取得しやすい仕事

営業でも、総務でも、経理でも、どの分野にも資格はあります。できれば国家資格の方が良いが、民間資格でもニーズの高い資格を狙える職種がいいでしょう。

  • 中小企業診断士
  • 日商簿記2級
  • 宅建
  • 販売士
  • FP
  • 社労士

などがあげられます。

こうした資格取得につながる職種を選ぶことも将来の転職に有利です。

また定年退職後でも、独立や再就職に役立ちます。

会社を選ぶ基準はなにか

ここが最も重要になります。

資格取得やスキルを高めることが必要であることを説明しましたが、会社選びを間違えると資格取得やスキル向上は望めません。十分な研究が必要です。次の3つの基準で進めてください。

業界と市場の将来性

会社が属する業界や市場が成長しているか、あるいは成長が見込まれるかどうかを考慮することです。とはいえ30年先を想定することは専門家でも無理なので、まずは当面5年間は大丈夫であることを確認します。

成長する業界・市場であるかどうかを判断する材料は、業界団体や民間調査会社が発表している資料、官公庁が公開しているデータ、〇〇白書や統計報告といった資料です。各省庁のHPで確認することができます。

日々できることとしては、各種新聞や専門雑誌などにも目を通しておきましょう。

新聞も雑誌も、今やほとんどの媒体がデジタル版を出しているので、webサイトで見ることができます。

情報収集は常に意識してください。

企業の文化と価値観

短い間とはいえ、自分が働く会社ですから、その会社が自分の価値観やキャリア目標に合う企業文化や価値観を持っているかは重要です。働く環境や企業風土が自分にあっているかを考え、マッチングさせることが欠かせません。

よく言われる「ブラック」とか「ホワイト」とか、単純な色分けでなく、企業理念やビジョンなども判断材料にしましょう。

調べたい会社が上場企業であれば、会社のHPにIR情報が記載されています。また有価証券報告書は金融庁のEDINETで見ることができます。非上場企業の場合はやや難しくなります。まずはHPなどのオウンドメディアをみましょう。SNSを利用しているのならばチェックする必要があります。どれもない会社だとしたら、検討対象外です。

※選んではいけない会社

企業のHP等を見て次のことが書かれていたら検討対象から外した方がいいでしょう

  • アットホームな会社
  • 20代で管理職、あるいは入社1年未満で管理職になれる
  • 福利厚生を極端にアピールしている(イベントばかり)
  • ヤル気重視
  • あなたの頑張りをしっかり評価

必ずしもブラックとは限りませんが、スキルアップや成長を感じることは少ないでしょう。

HPや求人票などにこうしたことが書かれている場合、その会社は仕事そのものが単純で労働集約型の会社、あるいは目標(売上)至上主義、手段は選ばず、というパターンが多いです。とりあえず正社員で、給料だけもらえればいい、という人に向いているかもしれません。

キャリア成長の機会と学びの可能性

この記事の中で最も重要なテーマになります。

社員に対して「キャリア成長の機会」を積極的に与えているか、学びの場を業務として設けているか、給料や賞与と同じかそれ以上に重要なテーマです。

リスキリングを積極的に進めているかなど、社員教育への取り組み姿勢の確認は必須事項です。極端な話、他の項目に多少不備があっても社員教育に積極的な企業はぜひ検討対象にしましょう。

むしろここだけ見ていれば良いといっても差し支えありません。

とはいっても、最低限の利益は出していることが前提です。

利益がなければ当然、会社は倒産です。

どうしてもやりたい仕事、入りたい会社が見つからない場合

(経済的に可能であれば、になります)

大学院へ進学し、出来れば博士号を取得して下さい。

そして就職先は外資系企業に絞ります。

ただ外資系は日本企業とは異なる採用活動をしているので注意が必要です。

特に経団連などの団体に加盟していない会社であれば就職協定はあってないようなものです。通年採用している会社もあります。

もし就職できれば将来の転職に有利になります。

日本国内でジョブ型が進めば完全に勝ち組です。

そうでなくても日本企業に比べて給与水準が高いです。入社1年目で1,000万円ということもあり得ます。その代わり福利厚生は薄いようです。

狭き門ですが検討してみる価値はあります。

将来の転職活動

★まだ就職もしていないのに、将来の転職活動は不安・・・

★今からそんなことを考えなくてもいいのでは・・・

という気持ちは分かります。

「備えあれば患いなし」

予備知識として事前に把握しておくことが重要です。

転職の時期

では、具体的な行動は入社後、どのくらい経ってから始めたらいいのか?

新卒入社で転職する時期は2〜3年目が良いといわれています。

理由:仕事への適性を把握するのには2年から3年が必要だから

3年以下だと「第2新卒」扱いになるので未経験でもOKとする企業は多いです。

3年以上、特に5年以上経過していると、業務での実績を問われることがあります。

ですが、何があっても3年間はガマンしろ、ということではありません。

何も得るものがないと感じたら、さっさと辞めてしまいましょう!

  • ブラックすぎる
  • ホワイトすぎる
  • ロールモデルになる社員がいない
  • 社内に緊張感がまったくない

こういう会社はガマンしていても、何も変わりません。時間の無駄です。

転職活動での注意点

具体的に転職活動を始める時期になったら、最低限、次のことをやってください。

活動期間を決めておく:転職に適した時期があります。期首(4月が多い)入社を念頭に活動を始めます。転職活動期間は3か月から6か月は最低必要になります。逆算すると年末年始から準備を始める、ということになります。これは一つの目安です。企業が求人を出すタイミングもありますので、必ず年末〜年始で4月入社になるということではありません。求人サイトのチェックや転職エージェントへの登録は事前に行っておくことも、転職をスムーズに行うために必要です。               

在職中に活動する:転職先が決まらないまま、退職することは極力避けたいです。

  1. 収入が途絶えてしまう。半年から1年間くらいは暮らせるだけの貯えがあれば話は別ですが。
  2. 社会保険が途切れてしまう。特に健康保険は大切です。次の仕事が決まっていなければ国保に加入しなければなりません。
  3. 会社によっては職務経歴に空白期間があることを嫌がります。忍耐力がない、感情的に動いてしまうのではないかと考える人もいます。

転職活動していることは内密にする:転職活動を始めたことを上司や周囲に話したり、SNSにあげたりする ことはやめましょう。強引な引き留めにあったり、人間関係が悪化することもあります。会社への報告などは転職先から内定をもらえてから。入社時期については転職先と調整しておくことも忘れずに!

今、やるべきこと

転職の意義、やり方などを解説してきました。

しかし今はまだ就活している学生です。

通常の転職活動以外にもいくつかやるべきことはあります。

1.やりたいこと、できることを棚卸しておく

   追加で「やりたくないこと」も洗い出しておくと良いでしょう。

  この仕事だけは、この業界だけやりたくない、行きたくないということを決めておけば

  企業選びでの判断ミスが減ります。やりたくない仕事をやり続けることは、苦痛でしか ありません。懲役刑みたいなものです。

2.起業、副業、について考える。

   会社に依存しないという生き方についても考えておくと良いでしょう。

     現在、起業した人、副業している人たちは、何を・どうやって・いつから始めたのか

  そうしたことを勉強し情報収集しておきましょう。

  入社した会社がどのような状況になっても、対処できる方法を知識として習得しておく ことです。転職や起業をしなくても役に立つことはあります。

3.「自分の身を守るのは自分しかいない」という認識をもつ

人は1人では生きていけません。また多くの人に助けられながら生きていくものです。それでも最終的に判断するのは自分自身です。自分の人生に責任を持つのも自分自身です。そのことは事前に了解しておいてください。

最後に笑うのか、泣くのかを決めるのはあなたの行動次第です。

   

まとめ

日本の産業界は過渡期にあります。終身雇用が崩壊した、日本型雇用はもはやオワコン。 

いろいろ言われていますが、どうも決定的なことは無いようです。

不確実性の時代というのは世の常。

1年後を予想するのも難しいのに、50年後どうなるのか、誰にも分かりません。

だから時代の変化に敏感になり、情報収集と学習を続けなければなりません。

人生100年時代を生き抜くスキルと知恵を身につけよう

あなたの就活が良い結果になることを祈っています。

おまけ

どうしても転職なし、一社で定年まで勤めたい方への提案

同じ会社で定年まで勤めても良い会社の条件

  • メンバーシップ型の雇用
  • 職能給
  • 基本、年功型
  • 50年後も必要とされる業種
  • 大企業
  • 企業内労組(あれば)

覚悟しておくこと

  • 年功序列なので若い時は給与が低い
  • 人事異動がある(転属、転勤、出向)抜擢人事はほとんどない
  • やりたい仕事、部署に配属されるとは限らない

おすすめは公務員、できれば国家公務員総合職です。

定年後の仕事斡旋までしてもらえます。次官や局長クラスになれば老後の心配は不要です。

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